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関西広域連合ってなに――”一極集中の是正を”

七尾 隆太


東日本大震災から約2カ月を経た5月17日、関西広域連合の井戸敏三連合長(兵庫県知事)らが首相官邸を訪れ、枝野官房長官に一通の提言書を手渡した。首都圏の非常事態に備え中枢機能のバックアップの仕組みを関西地域に構築するよう求めている。
 提言書では、わが国の政治、行政、経済の中枢機能は首都圏に一極集中しており、ひとたび非常事態が生じた場合、機能まひに陥る、と指摘。交通輸送手段や情報通信機能などが十分な関西がバックアップ機能を担ううえで最適な都市圏である、としている。
 関西の新聞各紙はこのニュースを2段、3段扱いで報じた。しかし、この種の関西ネタが、首都圏のメディアできちんと取り上げられることはほとんどない。少なくとも、東京朝日にはなかった。こんなメディア状況だから、首都圏では「そもそも関西広域連合って何?」といぶかる人が多いだろう。
 この組織は、地方自治法に基づく広域行政組織で、奈良県を除く近畿5府県と鳥取、徳島両県が参加して去年12月に発足した。府県の枠組みを超える政策課題に共同で取り組んでいこうというねらいで、全国で初めての試みだ。当面は防災、観光・文化振興、産業振興、医療、環境保全など7分野の広域事務の共同化からスタート。いずれは、国の出先機関が移譲されたときの受け皿、港湾や国道・河川の一体的な整備、管理などを目指している。
   東日本大震災では、発生2日後に緊急会合を召集、被災3県の支援相手を分担する「カウンターパート方式」を打ち出した。大阪府・和歌山県は岩手、兵庫・鳥取・徳島の3県は宮城、京都府・滋賀県は福島の担当で、職員と物資を送り込み支援活動を続けている。この方式は、支援が分散せず、地元行政と親密な関係を築きながら成果が期待できる、と評価されているという。
 近畿で唯一奈良県が「行政組織が屋上屋になるから」(荒井正吾知事)との理由で参加を見送っているが、同県内では対応に批判も少なくない。