▶ 2011年10月号 目次

変わる広告、痩せるメディア

箙 紘矢


   「商品を知らせ、欲望を惹き起こさせ、購入させる」。新商品発売には認知率獲得が先ずは必要。テレビスポットが最重要視された。エリアで3分の1の人に商品認知してもらうには理論上GRP(総視聴率)1000%必要で、関東・中京・関西の3大市場ではおおよそ2億円のTVスポット投下となった。このビジネスモデルは1990年代まで広告業界の主流だった。視聴率1%がテレビ局の商品となり、関東では1%10万円の値がついた。テレビ局は視聴率獲得競争に奔走。番組は低俗化し、視聴者の番組離れが起こった。
広告は商品認知や理解を促進するが、購入を決定付けるものではない。チャネルの店頭シェアーや販売促進策が大きく影響する。数年の年月と多額の広告販促費を投下し、大手コンビでの販路を獲得した新商品も、勝負は2週間。その間に成果を出さないと撤収となり、在庫処分に頭を痛める。そこで商品の顧客を囲い込み、購入層の組織化を図る。今はネットの進化で会員化も容易になった。さらにメールアドレスも取り、ONEtoONEの双方向の関係となり、自社メディアが誕生する。しかし顧客は移り気で、新しい他商品に目移りする。新しい顧客獲得となると、1人当たり5000円~1万円の費用が掛かったりする。
 映画「ソーシャルネットワーク」で有名になったfacebook。実名のネットワークで、世界で8億、日本では500万の会員がいる。SNS(social network service)と言われ、日本では匿名型でmixiやGREE、モバゲー。Twitterも含まれる。このSNSが今広告市場で力を発揮してきている。SNSは利用者が双方の合意の上で「友達の輪(ソーシャルグラフ)」を形成する。その輪は1人平均で80~200人。自分が気に入った情報や商品などに出会ったときに「いいね」ボタンを押すと、その情報が「友達の輪」に拡散する。友人からも同じように入ってくる。同じ趣味趣向同士の人からの情報は優良クチコミで、企業やブランドのファン作り、購入行動に結びつきやすい。会員化のチャンスも広がる。企業は関心の高い自社関連の情報をSNSで積極的に露出する努力を惜しまない。テレビ、新聞広告を有料メディア、自社が顧客管理するのを自社メディア、ソーシャルメディアは信頼や評価を勝ち取るので獲得メディアと言い、併せて「マルチメディア2.0」とも言う。これらの3つのメディアを組み合わせて有効な広告プランが誕生する時代となっている。