▶ 2013年3月号 目次
民主党再生のための検証と提言
柴田 守
政権交代から3年、国民の大きな期待を担って発足した民主党政権は、鳩山・菅・野田とトップを変えながらも、ドタバタを繰り返し、迷走したあげく、最後はボロボロになって、年末の解散・総選挙で、国民の審判を受けた。結果は予想以上の大敗で、先行き不透明な状況になっている。この20年余、政権交代を求め、政治改革に汗をかいてきたものとして、民主党には2極の1つとして、是非とも再生して欲しいとの願いから、この3年間を厳しく検証することが大切だと考えている。
この3年間を「自民党政権時代の負の遺産が大きかったため」とか「リーマンショック後の世界的な経済低迷があったため」などと、責任を転嫁することなく、自らの組織のあり方、政権の理念や運営、政策の進め方など、内在する問題をきちんと総括することが、再度、政権交代に挑戦するためには、重要だと考えている。
組織の面では、民主党は、そもそも1993年に非自民の7党1会派がまとまって、自民党の1党支配体制を倒した細川連立政権が、わずか1年で崩壊した後、離合集散を繰り返す中で、政権交代という1点に絞って非自民でまとまった集団で、中道・リベラルな考え方が中心ではあるものの、右から左まで、多様なイデオロギーの持ち主の集まりである。政権交代を実現したことで、政権交代という強力な接着剤が弱まり、議員ひとりひとりがその価値観や現状認識のちがいのままに、個人プレーに走り、チームワークが発揮できず、国民の目には、党内バラバラという印象を与え、急激に信頼を失う結果となった。これは議員ひとりひとりの自覚不足で、与党としての責任の重さを受けとめきれなかったことを反省しなければならない。
理念・政策の面から振り返ってみると、政権運営では「政治主導」「官邸主導」で求心力のある政権運営をめざした。「政治主導」の旗じるしは、自民党政権の政・官・財の癒着構造を変えるものとして、国民の期待を集めた。しかし、官僚をシンクタンクとして十分活用しながら、政策の決定(予算の配分)は政治が担うという本来の姿は実現できず、事業仕分けなどを通じて、政官癒着の問題点は一部明らかにしたものの、官僚依存に戻り腰砕けに終わった。官僚をスタッフとして使いこなすというマネジメント力の不足で残念な結果になった。
一方、「官邸主導」は、内閣と与党の関係を内閣主導で政策の決定を一元化して、権力の二重構造を排し、「決められる政治」をめざしたものだった。当初は、当の政策調査会を排して、内閣に国家戦略室を作るなど期待されたが、軌道に乗る前に、政権に入らなかった議員の不満を受けとめられず、政調会を復活させ、政策決定での内閣と与党の不一致ぶりが目立ち、国民の不信をつのらせる結果となった。「政治主導」「官邸主導」という理念は、政治の仕組みを変える基本的なものだけに、これを実現するだけの経験や能力が不足していたことは誠に残念で、この失敗をしっかり受け止めて、次につなげて欲しい。
このように検証してみると、民主党政権のめざした政治改革の方向は、これからめざすべき方向であったにもかかわらず、経験不足、勉強不足で実現できず、国民の不信を招き、自壊したとみるべきではなかろうか。
この3年間、政権交代があって、はじめて政治の一側面が国民の前に明らかになった。健全な議会制民主主義を守るためには、拮抗する2つの極(政党あるいはグループ)が必要で、全体主義や一党独裁が危険なことは、世界の歴史が示している。最近のポピュリズムの動向なども注視しなければならない。
政権交代した自民党政権は、野党暮しの経験もふまえて、安全運転で無難にスタートしたかにみえる。しかし、「経済再生」には共感するものの、「強い日本を取り戻す」という言い方には、かつての国家主義、権威主義が垣間見えて違和感を覚える。議会でしっかりとチェック機能を果たすために、民主党の再生は急がなければならない。
成長期から成熟期となり、世界有数の長寿社会となったわが国が、これからめざすべき国は、強い国ではなく、暮しいい国ではなかろうか。私は<自助><公助><共助>のベストミックスによる、個人尊重・社会連帯型社会の実現を望んでいる。
民主党がめざす<共生社会>のビジョンをしっかりと描き、自民党との対立軸を明確にして、再度、政権交代に挑戦することを期待する。
柴田 守(1962年卒 元連合副会長)