▶ 2014年2月号 目次

死に方を考えよう-延命治療は受けるべきか、否か

木村良一


いかに治療をしようと、あとは死が訪れるのを待つだけという終末期の状態に陥ったとき、通常は延命治療が施される。この延命治療に対し「体が死のうとしているのに無理やり引き留めるのは良くない」という意見がある一方で、「一律に延命を中止するのは無理がある。終末期は多様で人や状況によって違う。どんな状況が治療不可能というのか、議論を深める必要がある」との見解もある。
 ただ、だれにも人生に幕を下ろすときがやってくることだけは確かだ。2012年の日本人の平均寿命は女性が86.41歳で世界一、男性は79.94歳とやや低いものの、それでも世界第5位と高い。日本の高度な医療水準がこの平均寿命の高さを支えているわけだが、その半面「死にたいのになかなか死ねない」という矛盾も生まれている。
 私たちは終末期をどう迎え、どうやって死んだらいいのか。
 レスピレーターによる人工呼吸やおなかに穴を開けて栄養剤をチューブで胃に送る胃ろうなどの延命治療をやめ、自然な死を迎えることを尊厳死と呼ぶ。この尊厳死を実現するための「尊厳死法案」を国会に提案しようとする動きがある。超党派の国会議員でつくる議員連盟が土台となる法案を一昨年、まとめ上げた。書面に患者本人の意思表示が明記され、2人以上の医師が回復の見込みがない終末期であると判断すれば、延命治療を始めずにそのまま死ぬことができるという内容だ。
 延命治療を施さない医師に対する刑事責任や行政上の責任は問われることがなく、医師は患者の意思を尊重できる。さらに患者の延命治療を途中で止めることも認める法案も検討されている。現在、自民党のプロジェクトチーム(PT)で議論されているが、この議員連盟の法案をベースに各党の意見を取り入れて議員立法の形でまとめ上げ、それを4月ごろ、通常国会に提案する見通しだ。
 尊厳死の法制化を強く訴えているのが、会員数12万5000人の一般社団法人・日本尊厳死協会だ。協会の会員になると、尊厳死の宣言書(リビング・ウイル)に署名し、終末期になったときに主治医に提示される。宣言書には延命治療を拒否し、痛みを取り除く治療を進めてもらう要望が記されている。