▶ 2014年3月号 目次

新型インフルエンンザの発生を警告する

木村良一


 脅すわけではないが、新型インフルエンザ発生の危険性が高まっていると思う。中国で鳥から人に感染しやすい鳥インフルエンザが広まり、多数の死者が出ている。韓国では別の鳥インフルエンザが流行している。鳥インフルエンザウイルスが蔓延すると、人の新型インフルエンザウイルスに変異しやすくなる。注意が必要だ。
 メキシコで新型インフルエンザが発生し、あっという間にパンデミック(世界的大流行)を引き起こしたのが、5年前の2009年4月だった。このときの記憶が薄れてくるころだし、「天災は忘れたころにやってくる」との言葉もある。ここで警告しておきたい。
 なぜ、新型インフルエンザに注意が必要なのか。第1に感染力の強さだ。だれもが新型に対し、免疫(抵抗)力を持っていないため、人から人へと次々と感染していく。前述した09年の新型インフルエンザはメキシコでの大量感染からわずか2週間ほどで日本国内に入ってきた。それを思い出せばよく分かるだろう。
 次にウイルスの毒性。09年の新型インフルエンザのウイルスは人に対してマイルドで、適切な治療さえ受ければ感染死するようなことはなかった。しかし、新型が常にマイルドだとはかぎらない。毒性が強く、多くの死者を出すケースもある。
 これまで新型インフルエンザは09年を除くと、1918(大正7)年のスペインかぜ、1957(昭和32)年のアジアかぜ、1968(同43)年の香港かぜと3回発生している。なかでもスペインかぜは日本国内だけでも約38万8700人もの死者を出している。当時の医療水準の低さもあるが、ウイルスの毒性もかなり強かったようだ。
 いま新型が出現したらどのくらいの被害を出すのか。WHO(世界保健機関)や厚生労働省の推計によると、世界で7400万人以上が命を落とし、日本国内では全人口の25%に相当する3200万人が感染し、最悪で64万人が死亡する。被害が甚大なのは間違いない。
 中国で流行している鳥インフルエンザのウイルスはH7N9というタイプだ。鳥に対する毒性は弱いが、昨年3月、初めて人への感染が報告された後、10月から相次いで人への感染が確認された。中国本土、香港、台湾で計約350人に感染し、うち2割が肺炎などで死亡している。感染は生きた鳥や動物を扱う市場を中心に広まり、感染者の大半が鳥と濃厚な接触をしていた。