▶ 2014年4月号 目次

トラウマは消えたのか 〜消費増税とアベノミクス〜

陸井 叡


「残念ながら、円安にもかかわらず、思っていたほど輸出は伸びていない」先月(3月)19日の参議院予算委員会での安倍首相の答弁だ。安倍政権は、円高こそがデフレの元凶だとして、昨年4月4日以降 黒田東彦日銀総裁を動かして“異次元”の金融緩和を進めた。結果として外国為替市場でみるみるうちに円が“暴落”した。だが、それからほぼ一年、景気拡大の柱となるはずだった輸出数量は伸びるどころか、減るものも目立った。
実は、円安と輸出の新しい関係については、すでに、早くから指摘しており(参照:貿易立国日本との別れ〜TPPへの疑念〜 メッセージ@pen 2012年1月号 掲載 )、安倍政権は今回やっと、円安は輸出拡大に効果がないということを覚ったようだ。
さて、安倍政権は今月からスタートした消費増税の影響についても、問題は少ないと主張するが、その説明には破綻も予想される。 1997年、当時の橋本政権は3%から5%への消費増税を実施した。年度当初4月~6月のGDP成長率が一気に3.7%下落した。結果的に橋本政権は退陣に追い込まれ、消費増税のトラウマとして安倍政権も一時非常に気にした。だが、昨年度の補正予算、更に、今年度予算で公共事業費を大盤振る舞い、しかも、予算の執行を増税ショックが予想される今年度の前半に集中させる事で橋本トラウマは払拭したと自信を見せる。
しかし、ここにも落とし穴があるようだ。じつは、今、全国の工事現場では労働者が極端に不足している。ビルなどの骨組みに関わる熟練作業員の求人倍率は7.5倍と医師並み、高額の報酬が求められ、事業の担い手が決まらない「入札不調」が各地で相次いでいるという。
自民党得意の公共事業頼みの景気回復策も必ずしも通用しない時代となっている。