▶ 2014年9月号 目次

大阪ユニバーサルスタジオジャパンの復活

七尾隆太


 テーマパークの東の横綱は何と言っても「東京ディズニーリゾート」だが、西の横綱には「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市此花区)」を挙げてもいいだろう。そのUSJに、この7月15日開業した人気映画「ハリー・ポッター」を再現した新エリアが爆発的な人気を集めている。ひょっとしたら、低迷する関西経済を引っ張るエンジン役になることが期待できるかも知れない。
 USJの新エリアの正式名は「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」。東京ドームのグラウンド約3個分の敷地に、二つのアトラクションや八つのショップ、レストラン二カ所が広がる。魔法使いの住む村「ホグズミード村」、映画のシンボルといえる「ホグワーツ城」はじめ”ハリポタ”の世界観を忠実に再現している。
 USJの年間売上高の半分強に及ぶ約450億円を投じた。2010年、米フロリダ州の「ユニバーサル・オーランド・リゾート」に開設して以来、世界で2カ所目になる。臨場感あふれる夢の世界に浸れるとあって、”ハリポタ”は連日の大にぎわい。今のところ、地元より首都圏など他地域からの来場者が多いという。USJ全体で、年間入場者200万人の上積みを見込む。
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 新エリアの仕掛け人は、執行役員チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の森岡毅氏。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のマーケティング部門に勤めていたが、2010年にマーケティングのプロを求めていたUSJのグレン・ガンペルCEO(最高経営責任者)に請われて転じた。早速、米オーランドの”ハリポタ”を見た森岡CMOは導入を決意する。巨額な投資額にグレンCEOも当初は反対だったが、理詰めの説得に折れた。支持に回ったグレンCEOは社内で、「バットを振れ」と繰り返した。
 USJは01年に開業したが、足取りは平坦ではなかった。入場者は、初年度こそ1100万人を数えたが、翌年は700万人台に落ち込む。一時、経営危機に陥ったほどだったが、09年を底に急回復、森岡CMOの奮闘もあって、13年度は1050万人と、12年ぶりに1000万人台を回復した。