▶ 2014年10月号 目次

移植医療への関心高め、ドナーを増やしたい

木村良一


 臓器移植のドナー(臓器提供者)が減っている。その原因を探り、ドナーを増やす方法を検討するシンポジウムが9月11日、東京・西新宿の京王プラザホテルで開かれた=写真①。このシンポジウムを振り返りながら移植医療についてあらためて考察した。
 シンポジウムは第50回日本移植学会総会の目玉の企画として開催されたもので、私もパネリストのひとりとして参加し、意見を述べた=写真②。ちなみに日本移植学会は昭和40(1965)年10月に設立され、外科医ら移植医療に従事する約3400人の会員で構成されている。
 日本臓器移植ネットワークによると、移植を希望する患者は1万3000人以上に上る。これに対し、改正臓器移植法が施行された2010(平成22)年のドナー数は113人で、これをピークにその後は11年112人、12年110人、13年84人と減っている。内訳で見た場合、脳死での提供が多少増えたものの、逆に心臓死での提供が減少し、その結果ドナー全体の数が減った。改正臓器移植法はドナー本人の意思が不明でも家族の同意があれば脳死下での臓器提供ができるように改正されたもので、この改正によって脳死ドナーが大幅に伸びると期待されたが、そうはならなかった。
 ドナー数はどれだけ低いのか。日本のドナー数を世界の国々のドナー数と比較するとよく分かる。たとえば人口100万人当たりの2010年のドナー数は、日本が世界最低の0・9人。これに対し、最も多いのがスペインの34・7人で、この後にクロアチア30・5人、ベルギー29・6人、フランス24・6人、オーストリア23・4人…と続き、日本はメキシコ2・8人、ボリビア1・4人の後のどん尻にやっと顔を出す。
 シンポジウムのパネリストには私を含め、救急医や厚生労働省の行政官、日本臓器移植ネットワークの職員ら計6人が出席し、それぞれが現状や問題点を報告し、どうしたらドナーを増やせるのかについて意見を述べた。
 その中で私は「臓器移植という医療に国民が関心を持たざるを得ない状況をつくる必要がある。関心を持つようになれば、思わぬ事故で脳死になったときに自分の臓器を提供するかどうかを真剣に考えるようになるからだ」と話し、「問題はどうしたら国民に関心を持たせることができるかにある」と強調した。そのうえで反対意思表示という「オプティング・アウト」制度の導入を主張した。