▶ 2014年11月号 目次

「御嶽山噴火」 情報不足が大惨事を招く

木村良一


 「木曽の御嶽山が噴火し、山頂付近で人が倒れ、山小屋からは登山者が急いで下山している。死者が出ないといいが、どうして噴火が予知できなかったのだろうか」。9月27日の土曜日のお昼前、テレビのテロップで御嶽山の噴火を知り、私はフェースブックにこんなメッセージを流した。
 長野県と岐阜県にまたがる御嶽山は7合目までロープウェイで登れ、3000㍍を超える高山としては登山が比較的楽な山だ。噴火が始まったときは紅葉シーズンの週末で登山者は多く、とくに山頂は昼食時で混雑していた。  その結果、被害は当初の予想をはるかに超え、約60人もの死者を出し、1991(平成3)年に43人の死者を出した雲仙・普賢岳の火砕流の被害を大きく上回り、戦後最悪の火山災害となった。犠牲者には心から冥福を祈りたい。
 今回の惨事では登山者に火山情報が十分に伝わっていなかったことが判明し、情報伝達の在り方が課題となっている。
 御嶽山は1979(昭和54)年に有史以来初の噴火をした後、91(平成3)年と2007(平成19)年にも噴火している。今回は9月10日に52回、翌11日に85回の火山性地震を観測し、気象庁は11日に火山解説情報を発表し、「火山性地震が50回を超えたのは07年以来で、火山灰の噴出する可能性がある」とホームページに掲載するとともに地元の自治体にも情報を提供して警戒を呼びかけた。
 しかしマグマ活動に関連する火山性微動や地殻変動は観測されなかったため、噴火警戒レベルは変えず、5段階のうち最低の「1(平常)」をそのまま継続した。気象庁から情報の提供を受けた岐阜県下呂市防災情報課も噴火につながるとは考えずに外部に発信しなかった。
 専門家によると、噴火予知は難しく、噴火の前兆と確認できない段階で警戒レベルを上げて入山規制をかけると、混乱するだけでなく、温泉旅館など地元経済に大きな打撃を与えかねない。しかし「噴火情報か、それとも観光か。そのどちらを優先すべきか」と問われれば、安全のための「噴火情報」だ。一度や二度、狼少年になっても問題はないと思う。
 私も5年ほど前から山の魅力に取りつかれ、東京・奥多摩の低山から北アルプスの高山まで登っている。天候や登山道の状況、クマなど野生動物の出没などの情報は登山者にとって欠かせない。正確な情報を少しでも詳しく、できる限り多くほしい。得た情報に基づいて入山するかどうかを決め、装備も整えるからだ。