▶ 2014年12月号 目次

ぽんぽん船で巡る水都大阪

七尾 隆太


 大阪の都心部を流れる川は、カタカナの「ロの字」のようにつながっている。地元では「水の回廊」と呼ばれ、こうした地形は世界でも珍しいという。秋日和の10月、知人に誘われ、ぽんぽん船に乗って「水の回廊歴史探訪」に参加した。水面から見上げる光景は、陸上側からは気づかない大阪の魅力いっぱいだった。
 水の回廊は東横堀川、道頓堀川、木津川、堂島川から成る。昼過ぎに中之島東端の八軒家浜(はちけんやはま)から、ぽんぽん船に乗り込む。乗客は40人余り。探訪は、若手講談師、旭堂南青さんの歴史講談付きだ。八軒家浜は江戸時代、熊野詣での陸の拠点だった。役目を終えた近代になり、ビル陰の空地となっていたが、観光船などの船着き場として整備され、「川の駅」としてレストランなどもある。
 船は東横堀川を南下する。川面を流れる秋風が心地いい。今橋、高麗橋、久宝寺橋など由緒ある名前の橋下をくぐる。船の進行に合わせて、南青さんが声を張り上げた。「江戸時代、『浪華八百八橋』と言われたが、これは数が多いという例え。実際は200橋程度だった」「大阪の橋はほとんど『ばし』と呼ぶ。『はし』と読むのはぽんぽん船がくぐる約50の橋のうち二つだけ」――。
 上大和橋付近を右折して道頓堀川へ。1615年(元和元年)、安井道頓が掘削した堀川で、岸辺には芝居小屋が並ぶ劇場街だった。川はひと頃、汚れ放題だったが、近年、親水性のある遊歩道が整備され、人気スポットになっている。沿岸から、ビルの窓から、手を振る人が絶えない。リニューアル(10月23日)間近のグリコの大看板をカメラに収める。
 京セラドーム大阪を前方に見ながら、船は木津川を南へ。水面すれすれに架かる昭和橋近辺は、宮本輝の『泥の河』の舞台だ。ドーム付近では、にぎわいの場づくりの再開発が進んでいるように見受けられる。