▶ 2015年1月号 目次

STAP問題、報道も検証されるべきだ(上)

中島みゆき


 STAP論文について調べた理化学研究所の調査委員会(委員長=桂勲・国立遺伝学研究所長)が、STAP細胞は胚性幹細胞(ES細胞)が混入したと「ほぼ断定できる」との見方を示し、調査を終了した。発表から11カ月、「リケジョの快挙」と絶賛される一方で多くの疑惑が指摘され、世界的科学者の自殺という事態まで招いたSTAP論文問題。報道各社は研究不正を指摘された小保方晴子氏や理研の責任を追及している。しかしこの問題は、研究と政治、科学と経済など構造的問題をも顕在化させた。本来地味な基礎研究がここまで注目されたのには、大々的な報道の影響があったことは否めない。なぜ不正を見抜けなかったのか、なぜ「リケジョ」「割烹着」などの要素に飛びついたのか。過熱報道が起きた過程を科学的に検証した上で、議論を深める必要があるのではないか。

■「輝く女性」×「成長戦略」バイアス
 STAP論文問題は2014年1月28日、理研が科学誌「ネイチャー」に掲載されると発表したことに端を発する。会見内容は当初30日未明解禁の予定だったが英メディアのフライングにより前倒され、29日夜から熱狂的な報道がスタートした。その多くが「世界的快挙」と伝え、「30歳リケジョ」などと小保方ユニットリーダーに焦点を当てた。30日夜のNHKニュースでは「泣き明かした夜も数知れない」「休日はカメの世話」「研究室にはムーミン」というように人物像を伝えることに5分以上を費やす特集を組み、「割烹着」について巣鴨での街頭インタビューまで織り込んだ。小保方さんの感想文コンクール入賞歴や「リケジョ」とは何かという解説記事まで掲載した新聞もあった。
 こうした過熱報道はなぜ起こったのか。まず下地として「女性の活用」「再生医療で経済成長」といった期待感が、ニュースの「扱い」に大きな影響を与えたことが考えられる。