▶ 2015年2月号 目次

格差論争の本格化-ピケティ記者会見から-

陸井叡


 フランスの経済学者トーマス・ピケティさんが昨日(1月31日)東京・千代田区の日本記者クラブで会見した。土曜日の午前10時半という記者会見としては異例の時間だったが、会場には凡そ300人というプレス関係者らが詰めかけ、クラブを訪れたフランス人としてはミッテラン、シラク 両大統領とほぼ同じ取材陣の多さだという紹介が司会者からあった。
 又、ピケティさんは、ノーネクタイ 、"フランス訛り"の英語で語りかけ、著書「21世紀の資本」を世界の多くの人に知ってもらい、理解して貰うために英語を選んだと語るなど会見は率直な雰囲気の中で進められた。著書は、2013年夏フランスで出版されたが、翌年 アメリカで英語版が発行されると世界的なブームとなった。
 さて、昨日の会見では、ピケティさんは著書を支える膨大なビッグデータのうちから、アメリカ、EU、日本などについて、世界恐慌があった1930年代から今日まで凡そ80年に亘る国民所得格差の変化をグラフで示した。そして、日本は未だアメリカほどの所得格差社会ではないもののほっておくと深刻化して経済成長の妨げとなり、やがて社会不安 を引き起こし、民主主義の危機ともなりかけないと述べ、具体策として、所得再分配のための累進課税の強化、特に、富裕層から若年層への所得移転策を日本も真剣に考えるべきだと主張した。