▶ 2015年2月号 目次

情報収集の基本はやはり新聞

七尾隆太


 社会心理学に「確証バイアス」という考え方がある。毎日新聞の「余録」から引くと、「自分の願望や信念を裏付ける情報ばかり選んで重視し、それに反する不都合な情報は軽視したり排除したりしがちになる」心の現象を言う(14年8月27日付)。この日の余録子は、東京電力福島第1原発の汚染水対策がさっぱり進まないのに、安倍首相は繰り返し「状況はコントロールされている」。自分の主張に反する現実に目をつぶり、不都合な情報に耳をふさいでいるかのような首相の姿勢を「確証バイアス」ではないか、というわけだ。
 こうした自分に都合のいい情報だけを集めて、反証は無視する向きは、日常生活でも体験することが少なくない。特に、ネット時代を迎え、キーワードを入力するだけで、私たちは好きな情報をいつでも検索できるようになった。便利このうえないツールには違いないが、ジャーナリスト津田大介氏でなくとも「半面、嫌いなものや価値観を受け入れず、ネットで攻撃する人も増えている」(14年9月28日付朝日新聞)。大学でも教えている津田氏は「学生が情報を仕入れるのは、大体がネットの『まとめサイト』」から」とも言っている(同年12月17日付朝日)。まとめサイトとは、「匿名掲示板の2ちゃんねるやツイッターに投稿された話題を、読み物として整理するサイト」。学生たちは「まとめサイトに書いてあることを(真義を疑わず)そのまま口にしている」。
 情報収集の基本は、事実関係をできるだけ一次情報にあたって確認することである。この点、朝日新聞が去年、韓国・済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言が虚偽だったと認めて記事を取り消し、訂正したことに対して「遅すぎる」などと批判が浴びせられた。弁解の余地がない。こうしたなか、一部週刊誌の口汚い言葉や的はずれのネット情報をうのみにした物言いも多く耳にした。朝日は8月5,6日付で「慰安婦問題どう伝えたか 読者の疑問に応えます」と大型の検証記事を掲載したが、これすらも読まずに強弁する人に何度も出くわした。
 話は違うが、日本総合研究所主席研究員、藻谷浩介氏も「『里山資本主義』を出版したら経済成長否定論者と勘違いされることが増えた。表題だけで批評するのは禁物だ」と述べている(1月23日付朝日)。