▶ 2015年3月号 目次

民主党はもっと戦う姿勢を~英国労働党の復権までを学べ~

上毛野 哲人


英国の歴史学者で政治家、ジョン・アクトンは「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する」と、名言を吐いている。議会制民主主義ではメディアの批判力とともに野党のチェック機能が重要であることをいったものであろう。
今の政治状況のように「1強多弱の政治」が続くと、独断専行型政治が大手をふるうことになりかねない。後藤田正晴元副総理(故人)の著者「政と官」にもあるが、本来の内閣制度のあり方からみても危険である。
野党は日ごろ、政治や行政に目を凝らしていて、おかしいと思ったら警鐘乱打して治させ、いつでも政権をとってかわれる力を養っていることが大事である。岡田克也代表に代わって再出発した民主党は、格差問題にとどまらず、中東外交や安保政策、憲法問題への取り組みなどで、論戦力をさらに磨いて欲しいところだ。
その民主党は2012年秋の総選挙の敗北以来、支持率が振るわず、このところ政府・自民党の「敵失」もあって、やっと10%台になったところだ。
民主党議員に聞くと、なぜ有権者の支持を失ったのか、当初、敗因を理解できない議員が少なくなかった。最近では、税の無駄遣いの解明を約束しながら、突然、「増税は大儀だ」とマニフェストをかなぐり捨てた変節ぶりにあったことが理解されるようになった。
政権交代がないとあらゆる分野で人脈が固定化し、無駄や非効率も積み重なる。行政需要の変化に合わせた総合調整の機能も必要だ。政権交代があると、後任者に指摘されないように日頃から神経を使うようになる。長年の間、政府が知らぬ存ぜぬを通してきた沖縄の核密約などが明らかになったのも政権交代がきっかけだ。
議会政治を誕生させた英国では、戦後、労働党は約30年、保守党は約42年、交互に政権を交代してきた。米国もトルーマン大統領から、任期を2年残しているオバマ政権まで民主党は34年間、共和党は36年間政権を担当している。
日本で野党が政権を担ったのは、片山哲政権、非自民7党1会派による細川護熙、羽田孜政権、民主党の鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦政権で、合わせても10年に満たない。戦後政治の大半は自民党が担ってきたが、議会政治の本来のあり方からいえば、時々政権交代があることが望ましい。