▶ 2015年3月号 目次

冷めた目でみる東京オリンピックと観光産業

三田村達夫


2014年9月8日、2020年の夏季オリンピック・パラリンピック開催地が東京に決定いたしました。その瞬間は本当に大きな喜びに包まれましたし、各産業ともこれから商売の起爆剤になると大歓迎!といったコメントが相次ぎました。
旅行業をはじめ観光産業も概ね「歓迎ムード」です。もちろんそのことは間違いないことですが、全て手放しで喜んでよいのでしょうか?そこで、「本当に大丈夫」といったちょっと冷めた目で、2020年のオリンピック開催を見つめてみました。

① これはプラスと思われること=外国人旅行
日本の観光産業が取扱う旅行は大きく分けると「国内旅行」「海外旅行」「外国人旅行」になります。この中で一番大きく増えるのは当然「外国人旅行」と呼ばれるもの、すなわち、外国の方が日本へ来る旅行のことです。通常で考えれば間違いなく多くの外国人が日本を訪れるでしょうし、観光立国実現を大きくアピールできることでしょう。また、ホテルの建設やリニューアルも進み、外国語案内表記など各種環境整備も進み、東京ならびにその周辺の発展進歩にもつながると思われます。

② これはもしかすると…冷めた目その1=国内旅行の動き鈍る?
よく「東京にオリンピック観戦に来る人たちが増えれば、近くの温泉地に宿泊する方も増えるのでは」といった声が聞かれます。しかし、海外でオリンピックが開催された時の日本からの観戦ツアーを考えてみても、ほとんどが観戦のみ目的で、他の観光地を巡ることはほぼありません。同じように外国の方がオリンピック観戦をしても、他の温泉地に足を延ばす可能性は少ないのではないかと考えられます。つまり近隣の温泉地にとっては何も変わらない、あてが外れたとなってしまう可能性があります。
それどころか、東京周辺の方はこの時期オリンピックを生で見ようとスタジアムに足を運んだり、人気種目はテレビで観戦したりと、国内旅行の動きが鈍くなる可能性もあり、あてが外れたどころか、例年に比べるとマイナスになる可能性も否定できません。