▶ 2015年4月号 目次

群馬大病院の不祥事 他の病院でも起こり得る

木村良一


 北関東の拠点病院として知られる群馬大病院で、同じ医師による肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が次々と亡くなり、今年3月3日に病院側が全てのケースで医療ミスを認める最終の調査報告書を公表した。
 手術前に必要な安全性と有効性を検討する院内の倫理審査を受けていなかったばかりか、患者やその家族への説明も不十分だった。患者の死亡原因を探る検証委員会もほとんど開かれていなかった。患者の命を預かる病院としてあまりにも杜撰である。  それにしても一連の群馬大病院の不祥事で一番気になるのが「自分のかかっている病院は大丈夫なのか」ということだろう。他の病院でも同じような医療ミスが起こり得るのか。
 群馬大病院第2外科では2010(平成22)年12月から腹腔鏡による肝臓の高度な切除手術を導入し、14年6月までに93人の患者に実施した。ところがそのうち8人が、術後4カ月以内に死亡していたことが昨年11月に発覚し、大きな問題になった。
 群馬大病院によると、8人の手術をしたのは、全て40歳代の男性医師だった。この医師による開腹手術でも10人もの患者が死亡していた。その患者のうち1人はがんではなく、実際は良性の腫瘍だったにもかかわらず、遺族にも知らせず、生命保険の診断書にはがんと虚偽の記載をしていた。
 3月3日の記者会見で病院長はこの医師について「医師としての適格性に疑問がある」と話し、診療行為を停止させたことを明らかにした。執刀した医師に責任があるのは当然だ。それ以上に手術などのミスから8人もの患者の連続死を見過ごしてきた病院の組織としての責任は重い。この医師に手術をやめさせていればこれほど多くの患者が命を落とすことはなかったはずだ。  医療ミスや事故が起きたら背景も含めて原因を徹底的に突き止め、再発防止に結び付ける。その診療科や病院はもちろん、ほかの診療科や病院にも伝えて情報を共有し、同じ過ちを2度と繰り返さないようにする。群馬大病院はこの大原則を守れなかった。なぜ守れなかったのか。群馬大病院はそこを十分に検証し、明らかにする義務がある。
 私のつたない取材経験から考えると、どうしても病院には医療ミスを放置し、隠そうとする閉鎖的な体質がある。