▶ 2015年4月号 目次

<シネマ・エッセー> パリよ、永遠に

磯貝 喜兵衛


半世紀をへだてて制作された、同じテーマの映画を見た。第2次大戦末期、ドイツ占領下のパリ解放をとり上げた独仏合作『パリよ、永遠に』(2015年制作・原名Diplomatie )と、仏米合作『 パリは燃えているか?』(1966年制作・原名Is Paris Burning? )との間に49年の歳月が流れている。

近作の『パリよ、永遠に』は舞台劇の映画化、旧作の『パリは燃えているか?』は長編ノンフィクションの映画化という違いはあるが、共通しているのはパリを占領していた独軍司令官、ディートリッヒ・フォン・コルティッツ将軍と、中立国スウェーデンの総領事、ラウール・ノルドリンクの二人による息詰まる折衝で、ヒットラーのパリ破壊命令が実行されず、土壇場で”花のパリ”が救われた物語が中心になっていることだ。

実は、映画『パリは燃えているか』はわが家にとって忘れられないエピソードを残してくれている。新聞社で防衛庁を担当するようになった翌年、たまたまこの映画の試写を見た私が家内にも見るのをすすめたところ、封切り館で<感想文>を募集していた。子育ての合間をぬって家内が応募したら思いがけず当選し、そのご褒美がヨーロッパ一周旅行。今ほど外国旅行が楽に行けなかった時代の思いがけない贈り物だった。