▶ 2015年8月号 目次

「安保法制」をめぐる報道から、新聞のあり方を考える ~慶應義塾大学綱町三田会ミニゼミから~

中山椋子


 2015年度2回目の綱町三田会ミニゼミが7月1日、慶應義塾大学三田キャンパスで開かれた。今回のテーマは「安保法制」。今なお国会で激しい論争が繰り広げられている安全保障関連法案をめぐる報道から、新聞による報道のあり方について、メディア・コミュニケーション研究所の学生と担当教授、そして研究所OBが中心の5名のジャーナリストが熱い議論を交わした。
 まず学生側は、3人の学者が安保関連法案を「違憲」であると述べた6月4日の憲法審査会と、安保関連法案を「合憲」とする2人の学者が日本記者クラブで6月20日に開いた会見に関する在京各紙の報道を比較したレポートを発表した。比較の結果、発言の内容に対する見解だけではなく、報じ方にも各社の意向が大きく反映されていることが分かった。1面で大々的に報じた新聞社もある一方、政治面で簡潔に報じるにとどまった新聞社もあり、1紙しか読んでいないと、場合によっては多様な意見が紙面から得られず、読者の事実の捉え方に差が生じかねない報じ方になっていた。社説ではない事実報道においても各社の方針に沿うように出来事を報じることは、読者に適切な情報提供をしていないことになり、多様な意見が存在することを踏まえたうえでの議論ができないのではないか、との問題点が指摘された。これに対し、ジャーナリスト側は、事実をどう切り取るかは新聞社の自由な判断によるものであり、その結果紙面に違いが生じることは当然のことである。その報じ方の違いは決して内容を捻じ曲げるような「歪曲」ではないと主張した。また、日本の新聞は世界と比較するとかなり特殊であるという。