▶ 2015年9月号 目次

この秋、最大の難関を迎える安倍政権
~安保法制そしてアベノミクス~

陸井 叡


 第二次安倍政権がスタートしてから2年と8ヶ月余り。今年はかってないほどの猛暑に見舞われた。そしてその最中8月15日、日本は70回目の敗戦記念日を迎えた。お盆の時期と重なり今回の大戦で犠牲となった民間人、軍人およそ350万人の霊が東南アジアの密林や太平洋の海底深くから"帰って来ている"と語る人々もいた。 偶然の事なのか、安倍政権が推進する安保法制を巡る論議はこの戦後70年の時と重なる様に、先ず衆議院でそして参議院で審議の山場を迎えている。新聞、TVの連日の70周年特集がかっての戦争の実態を様々な資料や映像で伝え、これまで知られなかった戦いの実相が明らかにされた。これらの特集は国会での審議を見つめる国民に多くの考える材料を提供した。
 さて、安倍政権が憲法改定なしの解釈という手段で集団的自衛権を使えるとする方針を閣議決定したのは昨年2014年7月の事だった。だが"解釈"が憲法違反ではないと言う安倍政権の説明は難解を極めた。例えば最高裁判決(砂川事件跳躍上告審判決 1959年12月16日) が集団的自衛権を認めていると"読める"とする等の無理な論建てが随所に見られ、プロの法律家からも「読めば読むほど解らなくなる」(笹田栄司早大教授 6月5日付 朝日新聞朝刊)とまでこき下ろされてしまった。
 そして案の定、"解釈"を法案化した都合11本の安保法制関連法案の審議が今年5月から国会で始まると"解らないことだらけ"が露呈してしまった。肝心の集団的自衛権の使用についてさえ説明が二転三転する。ホルムズ海峡の機雷掃海でという当初の主張が根拠薄弱とみると、中国の進出が著しい南シナ海での適用を示唆するなどしたためもあって国民の多くは「よくわからない」(新聞各社の世論調査)という状態になっている。
だが、自信満々だった安倍政権は7月15日衆議院で法案の強行採決に踏み切る。そしてここから安倍政権を見つめる国民の目は一気に厳しくなった。新聞、TVの世論調査はいずれも安倍政権への不支持が支持を上回る逆転現象を一斉に伝えた。安倍政権の行く手に"突然"大きな壁が姿を現した。