▶ 2015年9月号 目次

<シネマ・エッセー> ベル&セバスチャン

磯貝 喜兵衛


アメリカのテレビドラマ・シリーズで一世を風靡した「名犬ラッシー」は、日本では1957年から10年近く放映された愛犬物語だった。この映画も、フランスで評判を取ったテレビドラマの映画化で、アルプスの寒村に住む孤児セバスチャンと野犬ベルとの冒険物語だ。

時は1943年。2次大戦でドイツ軍はフランスに浸入し、スイス国境に近いアルプス山麓にも、ドイツ兵が駐留している。村でパン屋を営む姪のアンジェリーナと共にセバスチャンを育てる山男セザールは頑固者で、大型犬のベルが家畜や村人を襲う”野獣”だと信じてワナを仕掛けたりする。

山の中で野犬のベルと遭遇したセバスチャンは、仕掛けられたワナに石を投げ入れ、危険を教えて助けるが、ベルを”野獣”だと信じる村人たちは山狩りをする。追い詰められ、銃撃されて怪我をしたベルをセバスチャンがけんめいに助けるあたり、ホロリとさせられるシーンが多い。

セバスチャン役のフェリックス・ボシュエは2005年パリ生まれで、2400人の中から抜擢され、今年末にフランスで公開予定の続編でも主役を務めるという。監督のニコラ・ヴァニエは1962年生まれ。作家、探検家、映画監督として北極圏、カナダ、アラスカ、シベリアを駆け巡り、冒険小説や記録映像を多数作っている。