▶ 2015年10月号 目次

安保法案成立 国家権力監視の視点を忘れるな

木村良一


 「戦争法案だ」「いや戦争抑止法案だ」との激しい議論の末、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が、19日未明に成立した。
 これまでにないほど新聞各社のスタンスもはっきり2つに分かれた。朝日、毎日、東京が反対の立場から論陣を張り、これに対し、読売、産経が賛成の立場の主張を繰り広げた。
 たとえば安保法案成立直前に書かれた各紙の社説の見出し。「熟議を妨げたのはだれか」(朝日、19日付)、「憲法ゆがめた国会の罪」(毎日、同)、「抑止力高める画期的な基盤だ」(読売、同)、「戦争抑止の基盤が整った」(産経、20日付)。見出しを比べただけでもスタンスの違いがよく分かる。
 社説の中身にも少し触れてみよう。15日付朝日は「民意無視の採決やめよ」とのストレートな見出しを掲げ、「首相が強調した徹底審議の結果が、世論の反対だ。27日の会期末までに参院で採決できなければ、いさぎよく廃案にするのが筋である」と主張する。一方、読売は16日付社説で「参院の審議時間は100時間近くに達し、同様の質問の繰り返しも目立ってきた。16日に地方公聴会が終われば、法案を採決してもよい時期ではないか」と述べる。
 おもしろいのは安保法案が参院特別委員会で可決した翌18日付の読売の社説だ。
 「民主の抵抗戦術は度が過ぎる」という見出しで「委員会室前の通路で、多数の女性議員らを『盾』にして、委員長や委員の入室を邪魔する。委員長らの体を激しく押さえつけたり、マイクを奪ったりする」「どんな理由を挙げても、こうした物理的な抵抗や暴力的な行為を正当化することは許されまい」「民主党議員らの言動は、国会外のデモとも連動し、法案成立をあらゆる手段で阻止する姿勢をアピールするための政治的パフォーマンスだと言うほかない」と手厳しい。
 国会周辺デモに関しては「主催者側が参加者数をさば読み、参加者の大半が運動家で一般の参加者が安保法案をどこまで理解しているかも疑問だ」との批判もある。
 しかしながら連日連夜の国会周辺のデモには考えさせられるところが多い。国会を取り巻くデモの人波は、審議が進むにつれて膨らみ、地方都市にも波及していった。