▶ 2016年2月号 目次

ツアーバス事故 「乗客の命を預かる」という自覚に欠ける

木村良一


 長野県軽井沢町で1月15日未明、スキーツアー客39人を乗せた大型の貸し切りバスが崖下に転落し、運転手2人を含む計15人が死亡した。亡くなった13人全員が、将来を嘱望された大学生だった。
 犠牲者の冥福を祈りつつ、筆を進めよう。
 バスは14日午後11時に東京の原宿を出発し、乗客が眠りについた翌15日午前1時55分ごろ、事故を起こした。
 「ものすごいスピードで車内が遠心力で左右に3回ほど揺れたと思ったら頭を打って意識を失った。気が付くと、車外にほうり出されていた」。ケガで済んだ乗客の証言である。  長野県警の調べによると、バスは下り坂で左側のガードレールに接触後、対向車線に飛び出し、対向車線側のガードレールを突き破って転落した。
 司法解剖の結果、65歳の運転手にアルコールや薬物の摂取はない。心臓発作などを起こした形跡もなかった。現場の250m手前に設置されていた監視カメラには速度を上げ、センターラインをまたいで蛇行しながら走行する様子が映っていた。ブレーキランプは点灯した状態に見える。
 タコグラフ(運転記録計)の解析から時速50kmの制限速度のところを時速80kmで走行していたことも判明。車体の検証からは6段変速のギアが、ニュートラルに入っていたことも分かった。この状態だと、エンジンブレーキや排気ブレーキが利かない。フットブレーキに頼るしかない。そのフットブレーキがなぜ、利かなかったのだろうか。長野県警や国交省には徹底的に事故原因を解明してほしい。
 それにしても驚かされるのは、次々に明らかになるバス会社の違法ぶりである。
 運行前に義務付けられた運転手の健康チェックを怠る。それにもかかわらず「実施した」と押印する。明らかに道路運送法違反だ。運転手が「大型バスは不慣れ」と不安を訴えていたのに運行させる。研修は十分だったのか。事故の2日前には健康管理に問題があるとして国土交通省から行政処分を受けていた。国交省が安全運行のために設置した基準額を下回る安値で運行を請け負っていた。労働基準法違反の疑いもある。
 事故を起こしたバス会社には「乗客の命を預かる」という基本的な自覚がまるでない。