▶ 2016年5月号 目次

「パナマ文書」この税の不公平さに私たち庶民はもっと怒るべきだ

木村良一


 これで税の最大の不公平さに風穴をあけられるかもしれない。中米パナマの法律事務所から流出した膨大な量の内部文書(「パナマ文書」)によって世界の権力者や資産家らが、タックスヘイブン(租税回避地)を利用して自国の課税を逃れている実態が、分かってきたからである。
 極端に税率が低いタックスヘイブンは、パナマや英領のバージン諸島、ケイマン諸島など基幹産業のない小国や地域が設けている。秘匿性が高く、脱税や資金洗浄、テロ資金作りなど犯罪の温床とされてきた。
 10年ほど前からは、各国間で税務情報を交換する体制が整えられ、日本も96の国や地域と租税交換協定などを結んでいる。一昨年からは海外に5000万円を超える資産を持つ人にその情報を税務署に提出させる義務付けも始まった。その結果、タックスヘイブンの情報も得られるようにはなってきたが、税務調査に非協力なところに資産を移されると、資金の流れが解明できず、課税できないケースは多い。
 課税の基本は公平、公正。真面目な納税者が損をするようでは納得できない。パナマ文書の流出をきっかけに各国の税務当局が知恵を絞って国際課税の枠組みをさらに強化したい。もちろん、いかがわしい取引をしている資産家は早く手を引くべきである。
 問題のパナマ文書は、60カ国以上の報道機関が参加する「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が、独有力紙の南ドイツ新聞を通じて入手。約400人の記者が1年かけてウラ取り取材を進め、今年4月3日に一斉に報じられた。ICIJには日本の共同通信や朝日新聞が参加してる。
 3日配信の共同通信の記事などによると、南ドイツ新聞は匿名の人物から「犯罪を明らかにしたい」との情報が入り、ICIJに合同取材を提案した。パナマ文書は暗号化され、そのデータ量は2・6テラバイト、文書数1150万通。設立したタックスヘイブン法人(ペーパーカンパニー)数21万4488社、法人設立に関係した各国首脳61人、それ以外の政治家、政府幹部128人などとなっている。