▶ 2016年5月号 目次

核燃料リサイクル問題でアメリカなどが日本に厳しい視線

桃田五郎


 「中国が発言をするなんて!まともに相手にできないが、日本批判の為にする発言と思う。本当によくいうよという感じだ。」大使経験もある元外務省0Bは怒る。
 昨年10月20日の国連総会第一委員会(安全保障と軍縮を担当)、中国の傳聡軍縮大使はこう発言した。
 「日本が保有する核物質は核弾頭1350発に相当する。適正な必要量をはるかに超えている。世界の核セキュリテイーと核不拡散、安全保障上の観点から深刻なリスクを生んでいる」
 「日本の一部の政治勢力は『日本は核武装をすべきだ』とかねてから主張して核兵器開発を要求している。世界は日本の動きを注意すべきだ」
 「日本の原発再稼働と使用済核燃料再処理工場計画は、こういう動きと連動する事態を悪化させる行動だ」
 こういう発言を打ち消すように今年3月31~4月1日にはワシントンでは、オバマ大統領の提唱した“核なき世界”の実現を目指す「第4回核セキュリティーサミット」には安倍首相も参加して、国際テロ組織の原子力施設への核テロの脅威に立ち向かうことで合意した。
 さらに4月10~11日にはG7外相会議が被爆地広島で開催され、参加7ヶ国の外相がそろって原爆慰霊碑、原爆資料館を訪れた。そして5月26~27日の伊勢志摩サミットでは、オバマ大統領の米国大統領として初の広島訪問が取り沙汰されている。
 しかし「中国にこういわせる素地がないかといえば、あることも事実だ」と日本側にも、この問題についての弱みが海外から見ればあることは率直に認める。
 日本は福島第一原子力発電事故前、54基の原子力発電所が稼動していた。つまり発電後の使用済み燃料の中には、核分裂していないウランや、原子炉内で生まれたプルトニュウムが含まれており、これを再処理して取り出し、高速増殖炉やMOX燃料としてプルサーマル方式で使用すれば、プルトニュウムも消費され燃料サイクルは完成する。もちろんこれらの炉などから出される高濃度の使用済み燃料の最終処分は、いわゆる“トイレなきマンション論”として反原発派の反対根拠になっている。しかしとりあえず核兵器製造問題とは切り離される。