▶ 2016年7月号 目次

「日本遺産」2年連続認定と尾道の挑戦

山形良樹


文化庁が平成27年度から創設した「日本遺産」に、私の郷里・広島県尾道市が2年連続で選ばれました。「日本遺産」は地域に点在する有形・無形の文化財をパッケージ化し、我が国の文化・伝統を語るストーリーを認定する仕組みで、歴史的魅力に溢れた文化財群を地域主体で総合的に整備・活用し、世界に戦略的に発信することにより、地域の活性化を図るものです。認定されれば文化庁からガイドの育成や外国語のパンフレットの作成などにかかる費用が補助されます。尾道市は昨年度の「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」に続き、今年度は、愛媛県の今治市と共同で申請していた「“日本最大の海賊”の本拠地:芸予諸島-よみがえる村上海賊の記憶-」のストーリーが日本遺産に認定されました。2年連続で日本遺産に認定されたのは尾道市が全国唯一です。
認定されたストーリーでは「戦国時代、宣教師ルイス・フロイスをして“日本最大の海賊”と言わしめた村上海賊。理不尽に船を襲い、金品を略奪する海賊(パイレーツ)とは対照的に、掟に従って航海の安全を保障し、瀬戸内海の交易・流通の秩序を支える海上活動を生業とした。その本拠地・芸予諸島には、活動拠点として築いた海城(うみじろ)群、海賊たちの記憶が色濃く残っている。尾道・今治をつなぐ芸予諸島をゆけば、急流が渦巻くこの地の利を活かし、中世の瀬戸内海航路を支配した村上海賊の生きた姿を現代において体感できる」とうたっています。
そもそも村上海賊は、2014年に本屋大賞を受賞した和田竜さんのミリオンセラー小説「村上海賊の娘」で全国的に注目されました。今回の日本遺産認定によってさらに注目度が増すわけで、地元では、サイクリングロードとしても有名な尾道と今治を結ぶ「しまなみ海道」への集客力アップと、海外からの観光客の増加を期待しています。尾道市では、日本遺産に認定された尾道の魅力や情報を発信するスマートフォン用の公式アプリ「尾道てくてく」を作り、文化財や祭り・イベント、地元のおすすめスポット、周遊モデルコース等の情報を随時ダウンロードできるようにしたり、日本語版だけでなく英仏中韓の外国語版の公式パンフレットを作成したりしてPRに力を入れています。