▶ 2016年8月号 目次

参院選でみえた保守化する若者の投票行動

李洪千


 7月10日に投開票が行われた第24回参議院選挙で、もっとも注目を浴びたのは18歳と19歳の若い有権者であった。彼らが投ずる一票によって参院選後の日本の政治が大きく方向転換するのではないかと期待が膨らんだ。若い有権者にスポットライトが当たったのは、公職選挙法の改正によって、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたからである。先進民主主義諸国に比べてもずいぶん遅れての政治参加である。
 今の日本は高齢者の政策が優先されるシルバー民主主義社会ともいえる。このままなら将来的に負担を背負わないといけない若者の意思が政治に反映されない。若者に将来の重荷になる内容を高齢者が決めてしまう矛盾が発生する。選挙権年齢を引き下げたのは、若者を政治に参加させ、自分の将来のことに関心を向かせて決めてもらうという意味が込められている。
 参院選で240万人の若者が新しく有権者として加わった。全有権者のうち約2%に当たる。少ない割合に比して彼らがもつ潜在的な影響力は大きい。選挙が接戦になると、1票で当落の明暗が分かれる場合もある。例えば、大分選挙区では、当選者の足立信也氏と古庄玄知氏との票差はわずか1090票であった。新潟選挙区で当選した森裕子氏と2位の中原八一氏は2279票で明暗が分かれた。それ以外にも1万、2万票差で涙をのんだ候補者も少なくないのだ。当落のカギを握っているのは、新しい有権者であり、彼らの動向から目が離せない。
若者の政治参加の増加はどのような効果をもたらすのか。その良い事例が、今年4月に韓国の総選挙で示された。与党が過半数を占めているなかで今回の選挙も与党が第1党になることが予想されていた。
 しかし、19歳と20代の投票率が増加したことで選挙結果は大きく変わった。19歳と20代の若者の投票率は合わせて49.4%。19歳だけの投票率を見ると53.6%と高い。20代の投票率は2012年の36.2%と比べて13.2%も増えた。もちろん、平均投票率の58.0%を下回る割合であるが、前回よりは10%以上増えた。若者の政治参加によって、与党は過半数を失い第2党となった。
 日本の参院選で若者はどのように行動したのか。総務省の発表によると18歳の投票率は51.17%である。19歳の投票率は39.66%である。両方を合わせた投票率は45.45%となっている。平均投票率54.70%より低い。地域別にみると18歳の投票率は大都市ほど高かった。