▶ 2016年10月号 目次

黒田バズーカの終わり? ~日銀の検証を"検証"する~

陸井 叡


先月(9月)8日、東京・東銀座のビル最上階の会議室。慶應義塾大学特別招聘教授 白井さゆり氏とジャーナリスト、金融関係者など10数人のランチミーティングがあった。と言っても、夫々が近くのコンビニなどでサンドイッチやおにぎりを買って先ずは部屋で腹ごしらえをすませる。頃合いを見計らって、司会が「では」と白井氏の発言を促した。
白井さゆり氏は、実は今年の3月31日まで日銀金融政策決定会合の審議委員の1人だった。 その日銀は、今年1月29日、サプライズの一つとしてマイナス金利を導入。その"功罪"を検証する会合が9月20日と21日に予定され、対応も公表する事になっていた。白井氏は、審議委員としてマイナス金利導入に反対票を投じた事が知られており、ランチミーティング会場は一足早く"検証"を行うという雰囲気だった。
「私はマイナス金利に必ずしも反対ではありませんでした。でも、もし、導入するならテーパリングを合わせて実行すべきだと主張したのですが、賛成を得られませんでした。」と白井氏は語り出した。"テーパリング"という一言がよどみなく彼女の口から出た事に金融関係者の1人は驚いた。テーパリングとは、今、日銀が実行している国債の大量購入の縮小を意味するからだった。
黒田東彦日銀総裁は、2013年4月の就任直後から"クロダバズーカ"と言われる大胆な金融緩和を実行、具体的には、国債の"異次元"大量購入を開始して、インフレ率年2%を2年で実現すると宣言した。
だが、既に、2年はとうに過ぎ去り、3年余りが経過した今年8月の消費者物価の上昇率も2%には程遠い有様だ。又、"クロダバズーカ"の直後はグングン上がった株価も、又、一時急激に進んだ円安も元へ戻りつつある。更に、これまで黒田日銀が次々に打ち出したサプライズも、このところの株安、円高を止め切れる効果はないようだ。特に、1月に登場したマイナス金利は、金融関係者を中心に悪評さくさくという受け止め方だ。