▶ 2016年12月号 目次

アメリカ大統領選挙と世論調査~他山の石として考える~

陸井 叡


 アメリカ大統領選挙は民主・共和両党の候補者選び、本選とほぼ一年の戦いが終わった。先月(11月)8日トランプ氏が勝利宣言、翌日のクリントン氏の敗北宣言、そして、先月28日最後まで確認作業が残っていたミシガン州でもトランプ氏の勝利が決まって大統領選挙は最終的に終了した。(ウィスコンシン州では第三党の要求で再集計が行われるが、結果に影響はないようだ)  その最終集計によると、全米の得票はクリントン氏48.1% 6446万9963票。トランプ氏が46.5%6237万9366票だったが、選挙人獲得数ではクリントン氏の232人に対しトランプ氏は306人となって、来年(2017年)1月20日からアメリカ・ホワイトハウスの主はトランプ氏と決まった。クリントン氏は全米得票では一位だったが、大統領には次点のトランプ氏が就任するというアメリカ大統領選挙の仕組みがなせるわざであるが、何れにしても、当初、共和党候補の一角に名乗りをあげた"トランプの冗談"が、大接戦の末とは言え、とうとう"ホントの話し"となってしまった。こんな筈ではなかったという今年6月24日のイギリスEU離脱の国民投票の結果にも通じるものがある。どちらも、"小差"が劇的な変化をもたらした。
 アメリカ大統領選挙の結果については、多くの事前の世論調査が"外れた"。では、調査が見逃したものは、何だったのか?何故、冗談がホンモノとなる変化を捕まえられなかったのか?
二つの問題点を考えてみる。まず、調査手法に限界があるのか?もう一つは、ジャーナリズムがアメリカ社会の変化を深く切り取って分析し、将来を見透す能力を失いつつあるのではないかというものだ。
 最初の問題点。世論調査の手段として一般的になっている固定電話だが、アメリカでもすでに利用者は減って、モバイルが急増している。調査会社は過去の投票結果などのデータをもとに固定電話の調査結果を修正しており、今のところ、モバイルが調査対象から漏れても致命的な問題ではないとしている。結果として、今回の全米トータルの得票率・得票は"外していない"。しかし、肝心の各州単位、特に二人が激しくせった州では、調査結果は必ずしもあてにならなかった。寧ろ接戦州では予想を裏切って、僅差でトランプ氏が勝利を続けた。