▶ 2016年12月号 目次

2016初冬~ソウル旅行記(上)

羽太 宣博


 11月14日午前、金浦空港に着く。韓国KBS・ラジオ国際放送の仕事を終えて帰国して以来、2年ぶりのソウルとなった。朴槿恵大統領の知人や側近が職権乱用などの罪で起訴された一連の事件をめぐり、朴大統領が辞意を表明するに至る混乱の最中での再訪ともなった。入国手続きを済ませると、韓国発国際報道の最前線で過ごした日々が少しずつ甦ってきた。そして、この2年の間に何が変わったのか。今何が起きているのか。好奇心が高まるのを覚えた。
 国情は、街行く人々の表情、飲食店街、繁華街などの喧噪ぶりにも表れる。2泊3日の滞在中、可能な限り出かけてみたいと思った。
一時帰国や送迎の折、繰り返し利用した金浦空港。午前中は、羽田便の到着ラッシュが続く。観光客やビジネスマンでいつも大混雑だった。果たして、ロビーには観光客を待つ添乗員はいるが、家族や知人を待つ市民の姿が少なかった。「閑散」とした金浦の表情は、ソウル市内に向かう地下鉄・空港線でも同じだった。日中の地下鉄では、アジュンマと呼ばれる女性たちが大勢乗り合わせ、車内談義があちこちから聞こえてくるのが常だった。しかし、話し声が聞こえない。車内は若い男女がひたすらスマホを操作する光景が広がるだけ。笑顔もなく、静かすぎる車内は日本と見間違えるほどだった。乗客の表情は何かに怒っているかのようにも不満そうにも見えた。筆者の思い知るソウルはどこへ消えてしまったのだろうか。
 宿泊はソウル中心のロッテホテルでの2連泊。玄関前広場は夕方、クリスマスイルミネーションが点灯し、華やかである。しかし、宿泊客は意外と少ない。航空運賃と5つ星ホテルの2泊代、すべてフリーの料金は合わせて3万円。その安さは、やはり昨今のホテル事情によるものと察した。正午過ぎにもかかわらず、チェックインは直ちに済ませることができた。
 滞在中の食事は、かつて筆者が食べ歩いた選りすぐりの韓国グルメと決めていた。その日の昼食は旬のカンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)。その夜はパジョン(チジミ)とカルグクス(手打ちうどん)、翌朝はアワビ粥、夜はプルコギ。