▶ 2016年12月号 目次

臓器移植法の施行から20年 どうしたらドナー増やせるのか

木村 良一


 臓器移植法が施行されて来年でちょうど、20年を迎える。ドナー(臓器提供者)とその臓器がないと自らの命を維持できないレシピエント(患者)とを結び付けて支えるのが、臓器移植法だ。しかし20年が経過するというのに日本のドナーの数は、世界で最低だ。臓器移植という高度な医療技術があるのにドナー不足で患者が救えない。日本はどうしたらドナーを増やせるのだろうか。
 世界的にもドナー不足は深刻でさまざまな問題が起きている。フィリピンなどでは臓器売買が後を絶たず、中国では死刑囚をドナーにしてその臓器を売買するなど人権上の問題も起きている。国際移植学会やWHO(世界保健機関)は、移植する臓器は自国で賄うよう指導。海外渡航移植に頼る日本は非難の対象になっている。
 日本では臓器移植が1997(平成9)年6月17日に成立し、同年10月16日から施行された。法案自体は議員立法の形で成立の3年前に国会に提出されていたが、審議入りされないまま何度も継続審議扱いとなり、96(平成8)年9月、衆院の解散で廃案となってしまう。
 その後、12月に再提出されたものの、衆院で「脳死は人の死か、否か」の議論が延々と続き、参院では「臓器移植に限って脳死を人の死とする」と修正されてやっと可決された。
 それでも臓器移植法の施行で、和田心臓移植(1968年)以来、止まっていた脳死移植が、日本国内で合法的に行えるようになった。施行後の初の脳死移植が99(平成11)年2月に実施された。その年の脳死ドナー数が4人で、2010(平成22)年の臓器移植法の改正まで平均7・5人という極端に少ない状況が11年も続いた。  改正案は05(平成17)年8月に国会に提出されたが、これもたなざらしにされ、4年後の09(平成21年)7月に成立した。この改正でドナー本人の意思が明確でなくとも家族の同意さえあれば、脳死下での臓器提供ができるようになった。その結果、改正法が施行された10年には、32人のドナーが現れた。その後44人、45人、47人、50人、58人と増えたものの、年間数千人のドナーが出る欧米とは比べものにならないほど少ない。