▶ 2017年1月号 目次

公共放送のトップ人事 ~経営委員会のトラウマ~

陸井 叡


 昨年(2016年)11月6日。東京・渋谷の日本放送協会(NHK)で開催された経営委員会は、今年(2017年)1月24日で任期を終える籾井勝人現会長の後任に上田良一氏を充てる事を議決した。上田氏はNHK経営委員会の常勤メンバーで、元三菱商事代表取締役副社長執行役員だった。 NHK会長の任命権は、12人の経営委員にゆだれねられ、会長を決める際は、12人の委員が、夫々 意中の人を推薦するのが、建前となっている。今回は、一部の委員が上田氏以外の人物を推したとされるが、最終的には上田氏でまとまった。
 実は、NHK会長人事をめぐっては、昨年の秋も深まるころから、大手新聞社の取材・報道合戦が熱を帯び、朝日新聞が昨年12月7日金曜日の朝刊で、籾井氏再選はないと一面トップで報じた。すると、同日の夕刊で今度は読売新聞がスクープ扱いで、「新会長に上田氏」と大きく伝えた。
 当時のNHK経営委員会のスケジュ-ルでは、月に二回 12月6日と12月20日の定例会合で人事を議論、12月20日の議決を想定していた。ところが、朝日、読売新聞に続いて各紙が週末をはさんで「上田氏」を報道、結局、経営委員会としても予定より二週間早く、週明けには決着をつけざるをえなくなった様だ。
 経営委員会が上田良一氏を新会長に選んだ決め手は"皆が知っていて、安心出来る人"という事だった。