▶ 2017年3月号 目次
民進党の生きる道は候補者一本化しかない
上毛野 哲人
民進党は野党第1党と呼ばれる。ただし支持率をみると自民党は30~40%前半、2番手の「支持なし層」は30%台。女性党首、蓮舫代表が登場して、一時「期待する」が56・9%もあったが、支持率は9%台(共同通信調査)と低迷が続く。この夏の都議選は小池旋風に煽られそうだ。メディアにももっと登場し、支持なし層に食い込む工夫はできないのだろうか。
女性党首といえば、社会党(社民党の前身)で初めて委員長になった土井たか子氏(後に衆院議長)の采配ぶりが教訓になる。当時、党内や支持基盤の労組内には強い抵抗があったが、土井氏はすぐに大化けする。「やるっきゃない」「ダメなものはダメ」「無理なものは無理」と、発信力を高めて党刷新に乗り出した。
それまで総選挙の立候補者は労組幹部中心に選ばれたが、土井氏は女性候補者やサラリーマンを発掘して支持基盤を広げた。
自民党の不祥事など「敵失」もあったが、1989年の都議選では改選議席を三倍増にし、直後の参院選でも議席を倍増させ、「おたかさんブーム」を生んだ。自民党は参院で過半数を割り、土井氏は参院で女性初の内閣首班指名を受けた。結果は、衆院優越の原則により、衆院指名の海部俊樹氏を首相に選出。
民主党(現民進党)は09年の総選挙で政権交代を実現したが、わずか3年で崩壊、大きな失望感を広げた。ようやく昨年の参院選から候補者一本化に向けた調整が行われ、参院選で32の1人区のうち自民・公明が21議席を占めたが、野党も11議席にまでこぎつけた。選挙対策担当の中堅議員は「なんとか回復の兆しが見え始めた」(選対幹部)と言う。さらに浮上させるにはどうするべきか。
政権党の党首は毎日のようにメディアに登場するが、野党にはその機会はほとんどない。メディアが注目するにはどうするか。参考になるのは1997年、雌伏18年ぶりに政権を奪還した英国労働党のブレア党首は、党再建のためにメディアの前で徹底討論を繰り返して党を鍛えたことだ。蓮舫代表は、野党4党の結束を目標に原発問題をはじめ党内に白熱した議論を起こすことしかないのではないか。その議論を通して民進党も生まれ変わったという姿をアピールすべきだろう。
論議の最大の難関は、野党共闘のあり方になる。民進党を支援する連合の組合の中に共産党との共闘に根強い反発がある。「共産党と組むなら袂を分かつ」と言い切る幹部も少なくない。しかしこれは米ソ冷戦時代の発想。ヨーロッパの共産党は1970年代半ばごろから、次々に社会民主主義に変わり、ソ連(現ロシア)共産党もソ連崩壊とともに影響力を失っている。日本共産党も世代交代が進み変化している。歴史の長い物差しでみると、今野党に必要なのは共産党勢力を大きく包み込んで行く寛容と忍耐である。それは政権担当能力を天下にアピールすることにも通じる。
衆院選で野党4党が候補者を一本化すれば、自民党は14年衆院選挙で獲得した291議席から60議席ぐらい減らすという試算もある。これは2014年の総選挙の結果を基にしたもので、自民党は選挙区では232議席獲得したが、試算は172議席に減り、比例区は変動なしとしても与党は266議席。その結果、過半数の238議席は越えるが、3分の2の317議席には届かないというものだ。
議会政治には1強多弱はなじまない。選挙態勢づくりいかんで1強多弱が解消する。政治を活性化することが優先されるべきで、自民党から野合批判が出る前に、野党協力―共闘の理念や政策調整を固めることが大事だ。
今や日本には金融資本主義の進展、グローバリズムやアベノミクスの金融緩和などの影響で、株やお金至上主義ともいえるすさんだ風潮が広がる。共産党が掲げる「日米安保条約反対」は調整が難しいかもしれないが、少子高齢化への対応や格差、非正社員問題、年金への不安などでは緩やかな共闘の基盤作りは難しくないだろう。
トランプ米大統領の要望を政府はなんでも飲むようだったら、米国の10%の富者が富の70%を握っているといわれるその富の一部を、雇用問題に活用するなどの提案をしてもいいだろう。1000兆円を超える財政赤字も増化傾向にある。「日米同盟強化」を繰り返したら、もはや日本は米国の一州になってしまうという指摘もある。トランプ米政権に生活者の視点から国益にかなった主張することこそ真の友人のあり方だろう。
トランプ大統領の訪日も憶測されている。実現すれば衆院解散論が浮上するだろう。日本の政治を活性化するには、候補者の一本化など野党の共闘体制づくりを急ぐことが時代の要請である。
上毛野 哲人(政治ジャーナリスト)