▶ 2017年5月号 目次

試写会から「PATRIOTS DAY」~ボストンテロ~

陸井 叡


 「PATRIOTS DAY 」はアメリカ独立戦争の最初の戦い、レキシントン・コンコードでの勝利(1897年)を記念するアメリカ合衆国の祝日。戦いから100年余り経った2013年4月15日、アメリカ・マサチューセッツ州ボストン市で記念のマラソン大会が開催されていた。117回目となる大会には、世界中から3万人のランナーが参加、50万人の観衆が沿道に詰めかけていた。レースから4時間余りが過ぎた午後2時15分頃、既にトップグループが走り抜けたゴール付近の沿道の人混みで爆弾が破裂した。12秒後、更に100メートル離れた路上で二回目の破裂があった。
 警察の発表では、爆発で8歳の男児と2人の女性が死亡、10人が手足を失うなど負傷者は282人に達した。世界を震撼させたボストン・マラソン・テロの発生だ。映画「PATRIOTS DAY」は事件発生から犯人逮捕までの102時間(4日間)を、ほぼ時系列的にドキュメンタリー・タッチで追ってゆく。映画のスタッフの一人、アメリカのCBS放送のドキュメンタリー番組「60Minites」のプロデューサーだったマイケル・ラダッキーが監督ピーター・バーグと共に当時、事件を伝えたニュースなどのアーカイブス映像を映画にふんだんに取り入れた。このドキュメンタリー・タッチが映画を盛り上げあきさせない。
 実は、映画にはボストンの街とマラソン風景が豊富に登場するが、映像は2016年大会を使っている。当時、FBIが捜査本部として事件現場を再現、其処に、犯人が使用した圧力鍋爆弾の破片など多くの証拠品を現状通りに配置した巨大な倉庫「ブラック・ターミナル・ファルコン」は、別の場所にセットとして造られた。映画では、ここで、街中の監視カメラから集められた映像がチェックされてゆく。そして、まもなく二人の若者が捉えられる。二人ともバックパッカーを背負うが、ひとりは黒い、他は、白い帽子を冠っている。慌てふためく多くの人々の中にあって、二人とも、落ちつき払って事件を見届け、ゆっくりと去ってゆく様子に捜査本部は"不審"をいだいた。