▶ 2017年7月号 目次

新聞ジャーナリズムよ、反骨精神を忘れるな

木村 良一


 獣医学部の新設をめぐる加計学園問題の読売新聞と産経新聞の報道ぶりに驚かされる。安倍政権擁護の「御用新聞」と批判されても仕方ない。読売は情報量が多く、ニュースの分析力もしっかりしていると評価していた。産経は十年間、私が論説委員として社説を書いてきた新聞社だ。それだけに残念である。
 加計学園問題の報道のなかで大きな節目となったのが、朝日の5月17日付朝刊1面の特ダネ記事だった。要約するとこうなる。
 「加計学園の国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、文部科学省が内閣府から『官邸の最高レベルが言っている』『総理のご意向だ』といわれたとする記録文書が文科省内に存在した」  加計学園は安倍晋三首相の親しい友人が理事長を務めている。それゆえ新設計画に安倍首相の意向が働いたかどうか。記録文書がこの疑惑を解くカギになる。朝日新聞も意識してか、秋篠宮ご夫婦の長女、眞子さまの婚約ニュースを2番手に回してこの特ダネを1面トップに添えた。
 当初、政府は記録文書を怪文書扱いにして存在も否定した。しかし5月25日、渦中の前川喜平前次官が記者会見して「記録文書は存在する」「行政がゆがめられた」と証言した。
 ここで問題の読売の記事(5月22日付)。扱いは第1社会面のカタ(2番手)。文科省在職中に前川喜平前次官が東京・歌舞伎町の出会い系バー通いをしていたとのスキャンダル。特ダネとして掲載された。
 推測だが、このタイミングでこのニュースを掲載する以上、政府側が読売にたれ込んだ可能性があるだろう。不道徳をにおわせる話で問題の焦点をぼかして世論を見方に付けようとする作戦はよく使われる。たとえば1972年の西山事件がそうだ。
 毎日新聞客員編集委員の牧太郎氏も、夕刊コラム(6月5日付)で「《売買春の可能性がある風俗産業→そこに頻繁に通っていた元官僚→そんな人物の言い分を信じてはならない》の三段論法? だが、僕には『前川さんVS安倍内閣・読売新聞』の構図に見えてしまう」と書き、「あの『西山事件』を思い出した」と述べている。