▶ 2017年8月号 目次

<シネマ・エッセー>いつも心はジャイアント 

磯貝 喜兵衛


スウェーデンと言えばイングリッド・バークマンとグレタ・ガルボという二人の名女優を生んだ国ですが、ヨハネス・ニホーム監督・脚本のこの映画は、スウェーデン映画界のアカデミー賞3冠をとっています。

映画の主人公、リカルドは生まれつき頭蓋が変形する「狭頭症」という難病を患い、母親が出産後、精神のバランスを失って育てられなくなったため、リカルドは福祉施設で成人します。高度の福祉国家といわれるスウェーデンでも、障害者に対する偏見は根強く残っていて、リカルドが施設を出ると、様々な差別や迫害にあいます。

同じような境遇の者が集まる施設の中で、リカルドは仲間たちと助け合って楽しく暮らすことが出来、30歳の誕生日には施設のみんなから心のこもった祝福を受けます。その日こっそりと施設を抜け出したリカルドが、自転車を走らせて母親が暮らす別の施設を訪ね、一瞬だけ母親と対面するシーンは胸を打ちます。

それと、リカルドが唯一得意とするスポーツが、フランスから始まった「ペタンク」という小さな金属のボールを投げ合って競うゲームで、パートナーのローランドからは金色のボールを誕生日にプレゼントされ、練習を重ねて自由自在に操れるようになり、北欧選手権に出場するまで腕を上げていきます。