▶ 2017年9月号 目次

シリーズ・客船で世界を旅してみた~その1~

山形良樹


 街を歩くと「地球一周船の旅」のポスターを良く見かけます。国際交流を目的に設立された国際NGO・ピースボートが主催する船旅の宣伝紙です。今回は、このピースボートを利用しました。実は91歳になる母が74歳の時、ピースボートで地球を一周し、この時の船旅が人生で一番楽しかったと私に何度も話してくれました。そこでサラリーマンを完全リタイヤしたら長年苦労をかけた妻とピースボートに乗ろうと決めていました。その夢がやっと実現したのです。4月12日、横浜の大さん橋からピースボートのオーシャンドリーム号に妻と2人で乗りこみました。約3ヶ月半の旅の始まりです。オーシャンドリーム号は、1981年にデンマークで建造されました。総トン数約3万5千トン、全長205m、全幅26.5mの11階建てで、多数のホールやラウンジを備え、プールやジャグジーのあるデッキスペースでゆったり過ごせる本格外航客船という触れ込みです。一般的に船の寿命は、貨物船が15年から30年と言われるのに対して、客船は40年から50年と長寿です。客船は値段が高いため、できるだけ長く使う工夫をしています。積極的なメンテナンスと腐食の防止、荒波を避けて航路を計画するといった具合です。オーシャンドリーム号は、寿命に近いといえば近い36歳、もはや豪華客船ではありません。航行しながら常にメンテナンスをしており、私たち夫婦の7階の客室では修理の音が響いたり、塗料の匂いが充満したりすることがありました。最初の頃、あまりの騒音に昼間だけ空いている部屋に避難させてもらったほどです。カリブ海や地中海をクルーズする客船が年々大型化し、船内施設もますます豪華になる中で、オーシャンドリーム号はどうしても見劣りしますが、服装がほぼ自由で、カジュアル感覚で地球一周の船旅を楽しむには最適な船と評価する旅のベテランもいます。この船を所有し運行しているのはアメリカの会社で、税金の安いパナマ船籍です。