▶ 2017年10月号 目次

"虎の威を借る狐"外交でミサイルから日本を守れるか

陸井 叡


 先月(9月)初旬。東京・麹町のビルの会議室。暗い室内の大型スクリーンに北朝鮮が発射したという想定で飛翔する物体をアメリカ製のミサイルが見事に撃墜する映像と、続いて地上の管制室で拍手、歓声をあげる人々の映像が写しだされた。
 会議室に集まっていたのは、外務省、防衛省などの官僚、そして、安全保障を専門とする学者らで、定例の研究会が開かれていた。映像の説明を行ったのはアメリカの兵器メーカーの日本代表だった。ハワイ近辺と思われる海上で行われたアメリカ軍によるミサイル撃墜の実験の模様を伝えるものだった。
 研究会では、イージスアショアなどの一連のミサイル防衛システムについての兵器メーカーの説明があり議論が始まった。学者の一人が「管制室での関係者のあの喜びようを見ると、撃墜はめったに成功しないのか?」と尋ねた。ところが、メーカー側があっさりと「そうなんですよ」と答えると、室内は一瞬静まりかえった。"北朝鮮のミサイルは必ずしも撃ち落せない"とわかったからだ。
 さて、安倍総理大臣は先月の記者会見で衆議院を解散し今月22日を投開票日とする事を明らかにした。そして、解散の理由の一つとして「国民の信任なくして毅然とした外交はできない。(選挙が)北朝鮮の脅しによって左右される事があってはならない」などと述べた。
 アメリカのトランプ政権が誕生してから10ケ月近くになるが、安倍首相のトランプ外交ベッタリ路線は各国の中でも際立っている。