▶ 2017年10月号 目次

シリーズ・客船で世界を旅してみた~その2~

山形良樹


 先日、新聞を読んでいたらテレビ欄の下に「まさにクルーズ生活」という見出しとともに、豪華な食事を囲んで語らう高齢者や社交ダンスを楽しむお年寄りの写真が目に飛び込んできました。よく見ると、千葉県にあるシニア向け分譲マンションの広告でした。「非日常感が醍醐味の豪華客船、ここではクルーズ生活を365日味わえます」という謳い文句、これを読んでの第一印象は、「ピースボートには当てはまらないな」というものでした。
 海外から日本に帰ってくると普段見慣れた風景がどことなく違って見えるものです。でも、ピースボートの長旅から帰国したとき、心の中に変化は起きませんでした。町を歩いても電車に乗っても見えてくるのはいつもと変わらない景色なのです。友人にこの話をしたら、ピースボート生活は非日常ではなく日常だったのではと分析してくれました。つまり、ピースボートは、ほとんど日本人という村社会で、毎日特別に豪華な食事が出るわけでもなく、習いものやスポーツなど国内で行っていたことをただ船内で継続しただけで、国内の日常生活の延長でしかなかったという訳です。
 さて、旅の方に話を戻しましょう。4月21日、国外の寄港地としては最初のシンガポールに到着しました。スコールと強い風のため1時間ほど下船が遅れ、観光の出鼻をくじかれました。シンガポールは、新婚旅行で訪れて以来40年ぶりの訪問です。人口約570万人の淡路島ほどの島国が、東南アジアの貿易、交通、金融の中心地として目覚しい発展を遂げていました。
 今回は、5年目にオープンした近未来ガーデン「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」観光をツアーに選びました。高さ50mの人工の木・スーパーツリーにあがり、高層ビルの上に船が乗ったような形のリゾートホテル、マリーナ・ベイ・サンズや金融街を見ながら空中散策を楽しみました。
 ピースボートスタッフのシンガポール人から聴いた話では、シンガポールは、PAP・人民行動党の事実上の一党支配で言論の自由はなく、経済格差は米国並み、男子は18歳から2年半の兵役があり、出生率は世界で最も低く、外国人排外主義も高まりを見せるなど数多くの課題があるということです。