▶ 2017年12月号 目次

「加計学園問題」疑惑払拭には証人喚問しかない

木村 良一


 一度はこの「メッセージ@pen」で取り上げておきたい、と気になっていたことがある。
 衆院選前の10月8日の日曜日、東京・内幸町のプレスセンタービルで行われた日本記者クラブ主催の党首討論会だ。
 NHKでテレビ中継され、自宅で見ていた。第2部の記者クラブ側の質問とそれに対する8党首の返答に移り、朝日新聞の論説委員が学校法人・加計学園の獣医学部の新設問題についてただした。
 「首相は新設計画を知ったのが『(加計学園が事業者に認められた)今年1月20日だった』と国会で答弁していたが、びっくりした。これからもそうおっしゃり続けるのですか」
 安倍首相はこれには答えず、特区諮問会議の委員が「新設の審査に一点の曇りもない」と国会で証言したことを取り上げ、「これを朝日新聞は報道していない」と批判した。
 これに朝日論説委員が「しています」と答えると、安倍首相は「ほとんどしていない。ほんのちょっとですよ。アリバイづくりでしかない。愛媛県の前知事が(7月10日の国会で)『歪められていた行政が正された』と証言しましたが、それについては全く報道していない」と詰め寄った。
 再び朝日の論説委員が「しています」と反論すると、安倍首相は「本当に胸を張って記事にしているといえますか」と質問。朝日論説委員が「できます」と答えると、安倍首相はこう切り返した。
 「ぜひ国民の皆さん、新聞をよくファクトチェックしていただきたい」
 安倍首相のこの発言を聞いてあのトランプ米大統領を思い出した。トランプ氏はホワイトハウスの記者会見などで自分の意に反する記事に対し、「フェイク(偽)ニュースだ」と繰り返し、それをツイッターで広めている。その結果、事実を嘘だと信じ込んでしまう米国民が多く出ている。
 安倍首相はトランプ大統領と太いパイプを作り上げた。1年前、トランプ氏が米大統領に就任するやいなや、各国に先駆けて渡米して祝福した。トランプ大統領の初来日(11月5日~7日)では異例のゴルフ接待でもてなし、「シンゾー=ドナルド」の蜜月ぶりを国内外に強くアピールした。
 安倍首相はトランプ氏から言論の自由を封じる術を学んだのだろうか。国会答弁などで政府寄りの人物の証言を何度も取り上げ、疑惑を払拭しようと懸命だ。