▶ 2017年12月号 目次

2017秋~ソウル旅行記

羽太 宣博


 10月23日朝、台風21号の過ぎ去った成田空港を定刻に出発し、仁川に着く。穏やかな秋晴れは、韓国を取り巻く情勢とは対照的であった。北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返し、朝鮮半島の緊張が続いている。慰安婦合意や徴用工問題などをめぐり、日韓関係は冷え込んだままだ。文在寅政権は、外交・安保に加え、雇用創出や財閥改革などの難問を抱えている。朴槿恵大統領の弾劾を求めたローソク集会から1年。韓国の「今」をつぶさに見たいと思い立ち、旧知と再会する2泊3日のソウル旅行だった。
 仁川からはAREX(空港エクスプレス鉄道)に乗車し、ソウル市内へ向った。車内最前列には「聯合ニュースTV」のモニター画面があった。「再び安倍氏勝利・・・韓日関係で当分変化なし」「慰安婦資料、ユネスコ無形文化遺産で初審理へ」などと日本語で伝えていた。ニュースの合間はPRビデオとなる。平昌冬季オリンピックのPRに続き、竹島(韓国でいう独島)の白黒写真が映った。「独島はずっと韓国領」「独島は韓国の主権回復の象徴」などと英語のメッセージが続く。日本の政治・経済への関心は相変わらず高い。竹島・慰安婦問題では、一貫して変わらぬ「韓国」の立場がひしひしと伝わってくる。揺れ続ける内外情勢に、韓国も変わっているはずなどと考えるうちに、43分でソウル駅に着く。繁華街、明洞にあるホテルにチェックインし、ソウルの「今」を見にすぐ街へ出た。
 外国人観光客の動向は、その国の対外関係を反映する。ホテルに近いデパートの免税フロアに行くと…何かが違う。韓国の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備をめぐって、中国との関係が急速に悪化し、中国人団体客が激減していた。2016年の訪韓中国人は800万人を超えたが、今年は8月までで50%近く減ったという。トランプ大統領のアジア歴訪を控えた31日、中韓両政府が関係改善で合意したと発表したものの、中国からの観光客が戻るかどうかは不透明だ。反日・嫌韓の連鎖で大幅に減った日本人はどうか。不安定な半島情勢もあって、韓国を訪れる日本人は足踏み状態だ。とはいえ、訪韓する外国人が減る中、日本人は相対的に目立つ。翌朝、明洞にある「粥」の店に行くと、午前8時ですでに満席。見回せばほぼ日本人で、店を出る頃には10人以上の日本人が列を作っていた。夜の明洞は、目抜き通りに露店が揃い、さながらお祭りのよう。定番のトッポギやおでんなどのほか、ロブスターのチーズローストやビーフステーキも登場し、1000円から2000円で売られている。まさに観光客目当てだ。経済格差に苦悩する店主が単価の高い商品で収入増を図ろうという思惑も垣間見える。日本と並んで観光に力を入れる韓国は、2016年から「Visit Korea」と名付けたキャンペーンを展開し、観光客の誘致に懸命だ。