▶ 2017年12月号 目次

シリーズ・客船で世界を旅してみた~その4~

山形良樹


 今回の船旅は、私にとって、ある種のサバイバルゲームと言っても過言ではありませんでした。病気への不安や船の揺れによるケガの心配に加え、もうひとつの難関が待ち受けていたのです。それは海賊でした。海賊と聞くと、ジョニー・デップ主演の人気シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」を頭に浮かべる人が多いと思います。あんな愛嬌も色気もある海賊だったら会ってみたくもなりますが、今回のソマリア海賊は絶対に会いたくない相手でした。
ソマリア海賊は、アフリカ・ソマリア沖のインド洋からアデン湾にかけて出没します。もともとは貧しい漁師たちが海賊に豹変したと言われており、ソマリアが無政府状態になっているので取り締まるものがいません。スリランカのコロンボ寄港を前に開かれた航路説明会で、海賊対策を聞きました。
   スリランカのコロンボ出航翌々日から約1週間は気が抜けないとのこと。昼間より夜間が危険なので、客室のカーテンを締め、公共スペースの窓も光が漏れないようにカーテン等で遮光し、オープンデッキは立ち入り禁止とするなどの注意点が挙げられました。
 イエメンのソコトラ島沖から護衛艦がつきますが、そのうち護衛艦は離れるので、そこから各国の艦隊の補給基地があるジプチに逃げ込むまでが一番危険だという説明でした。凪の時に海賊は出るそうで、実際ピースボートも過去2回ソマリア海賊に襲われたことがあると、その後乗客から体験談を聞きました。
当初の予定では5月2日の午前8時に護衛艦と合流し、他の船と船団を組み前後左右を護衛艦でガードしてもらう予定でした。しかし、救急患者を急遽インドで下船させた影響で、船は予定より1日以上遅れて航海したため、合流地点に間に合わず護衛艦付きの船団は先に行ってしまいました。
 私たちの船は、3日午後6時、なんとか海上自衛隊の護衛艦「てるづき」と合流しました。遅れたおかげで、旅客船1隻に護衛艦1隻という贅沢な守りになりました。「てるづき」は前方斜め前を左右にゆっくりと移動しながら私たちの船を先導してくれました。哨戒用のヘリコプターが周りを旋回したあと「てるづき」に無事着艦した時には、我々乗客の間から拍手が湧きました。